2007年に医師となり、総合内科で診療を続けて17〜18年が経ちました。
肺炎や心不全といった一般内科から、膠原病、白血病を含む血液悪性腫瘍まで、さまざまな疾患に向き合ってきました。ここ2年ほどは、特に悪性腫瘍の末期患者さんの診療に力を注いでいます。
在宅訪問診療には限界もあります。しかし、その中でも緩和ケアに関していえば、病院でできることの多くが自宅でも行える――私はこの事実を日々実感しています。
もちろん、自宅ではできないこともあります。骨転移に対する放射線治療や、腹腔神経ブロックといった大がかりな処置、そして抗がん剤治療は総合病院でなければ難しい。だからこそ病院との連携は不可欠です。

一方で、疼痛コントロールをはじめとする薬物療法は、病院と同じ薬を使うことができ、自宅でも点滴やPCAポンプを活用して持続投与が可能です。つまり、自宅という慣れ親しんだ場所で暮らしながら、病院とほぼ同等の緩和ケアを受けられるのです。残された時間をどこで過ごすか――病院なのか、自宅なのか。どちらにもメリットとデメリットがありますが、その選択肢を持てること自体が「豊かさ」ではないでしょうか。
病院が安心だと思う方もいれば、絶対に家で過ごしたいと願う方もいます。心が揺れ動き、当初は病院を選んだ方が「やはり家に帰りたい」と望むこともあります。その想いに正解はなく、一人ひとり異なるグラデーションがあります。私が担いたいのは、その想いを受け止め、支えることです。
これまで総合内科で幅広い疾患を診てきた経験が、最も活きるのは在宅緩和ケアだと強く感じています。その理由は、患者さんが単一の病気だけを抱えていることは稀だからです。高齢化が進む現代では、60歳以上の方の約2人に1人が複数の病気を抱えています。
病気は互いに影響を及ぼし合います。がんの症状緩和に使う薬が腎臓や心臓、糖尿病に影響することも珍しくありません。だからこそ、ひとつの病気に偏らず、全体を俯瞰して考える必要があります。そしてその要を担うのが「診療プランの言語化」です。
- いくつ病気があるのか
- どの順番で発症したのか
- どの病気がどの病気に影響しているのか
- それぞれの病気の診療プランを明らかにしているか
診療プランとは、単なる方針ではありません。「いつ・何を・どのように行うか」を具体的に記したものです。例えば「何月何日にモルヒネを内服で5mgから開始」といった形で示されてこそ、プランと呼べます。逆に「痛みが強くなったら薬を検討」といった曖昧な記載では、未来を支える計画にはなり得ません。患者さんやご家族、そして医療チームが安心して次の一歩を踏み出せるようにするためには、この具体性が不可欠なのです。
こうした見通しを言葉にしてカルテに残すことで、未来への不安を軽減できます。例えば「1週間後には寝返りが難しくなるかもしれない」と予測できれば、床ずれといって褥瘡という病気を予防することもできます。これこそが内科医としての積み重ねが活きる部分であり、在宅緩和ケアの現場でこそ大切にされるべき視点だと思います。
私は自分を「優れた医師」と語りたいわけではありません。ただ、どんな状況でも丁寧に診療し、診療プランを言語化し続けること――それが自分の信じる医療のかたちです。在宅診療は病院との連携が前提です。緊急入院が必要になったとき、きちんと情報が伝わっているかどうかで、その後の医療の質は大きく変わります。だからこそ日々の診療の一つひとつが重要なのです。
だからこそ、私は総合内科で培った経験を訪問診療に生かし、どの現場でもより良い医療を提供できるよう努め続けたい。患者さんにとっての豊かな選択肢を支えるために、医師としての「差分」を惜しみなく還元していきたい。
これからも患者さんが「ここで生きたい」と選んだ場所で、その時間を支える医療を実践していきます。


